第18回交流会

2017年6月10日(土) 15:30 ~ 18:00

場所:吾妻交流センター

 第18回の交流会では、前半は岡村彩乃さん(株式会社AWAKE GATE)に、後半は野田篤司さん(宇宙航空研究開発機構)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の岡村さんのご講演では、ご自身の実体験と共に人材育成やキャリアプラン構築についてご紹介いただきました。また、人材育成業界の中でAWAKE GATE社がどのような取り組みを行なってるかについても、具体的な例と共にご説明いただきました。個々人の現在や将来を考える上でとても参考になるご講演でした。

 後半の野田さんのご講演では、新しいアイデアを生みだすための部屋”創発工房”や低軌道衛星”SLATS”の話題をもとに、アイデアの発想法や心構えについてご講演いただきました。「いいアイデアを生むためには日頃からアイデアを出す練習をし、感性を磨いていくことが重要である」という点が印象的な、非常に面白いご講演でした。

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発表者:岡村彩乃さん(株式会社AWAKE GATE)

タイトル:ひとりひとりと向き合う人材育成

 日々仕事に励む我々ですが、目の前のことに追われ自分をどうキャリアアップしていくか迷うことはないでしょうか?

 今回の講演者である岡村さん自身は学生時代は筑波大学にて宇宙工学を学び、その後ご自身の進む先について悩まれ、「派遣」と「紹介」の機能を合わせ持った「人財育成会社 LIFEJUNCTION」を立ち上げられました。

 ここでは、ひとりひとりに向きあい、企業の需要、人材の需要をみながら、キャリアアップ方法を提案されています。

 ‘’イマ、企業に求められる人材とは?!‘’ 

人材教育をテーマにそんな話題提供をさせていただきます。

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発表者:野田篤司さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:突拍子もないアイディアをカタチにする

 今年度またひとつ衛星が打ちあがります。その名も「‘’Super Low Altitude‘’ Test Satellite:SLATS」。その名の通り超低高度で飛行し、地上に近い分、より地球を高い解像度で観測することができるようになります。しかし超低高度(*1)での運用は、大気抵抗の影響が大きく軌道維持することが困難のため、これまで難しいといわれていました。

 ここで、できる!と新しいアイディアを提案されたのが野田さんです。

 SLATS打ち上げを前にし、プロジェクトの立ち上げについてにお話を伺います。

 またこのほかにも小型衛星の立ち上げから、最近は創発工房という研究者·エンジニアが自由に発想を展開できる部屋も作られました。「アイディアをカタチにする」をテーマに様々な話題提供させていただけたらと思います。

(*1) SLATSは一番低い高度で180kmを飛行、通常衛星は高度600~800kmを飛行

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第17回交流会

2017年2月11日(土) 17:00 ~ 19:30

場所:吾妻交流センター

 第17回の交流会では、前半は加藤大さん(産業技術総合研究所)に、後半は梅舘拓也さん(東京大学)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の加藤さんのご講演では、身近に普及しつつある”その場医療”におけるセンシングの意義やその難しさ、その中でのナノ技術の活用方法などをご紹介いただきました。微小なものを作れること、わずかなものを測定できることによって初めて可能となる世界がわかる、とても面白いご講演でした。

 後半の梅舘さんのご講演では、”やわらかいロボット”の概念の着想から実際のロボットへの実装まで、これまでに行ってきた様々な研究の内容をふまえてご紹介いただきました。生物をモデルとしたロボットの方が環境の変化への対応が容易になる場合がある等、実際の実験の動画を交えてご紹介いただき、非常に興味深いご講演でした。

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発表者:加藤大さん(産業技術総合研究所)

タイトル:モノをはかる: ナノとバイオを織り交ぜた研究の話

 病院や職場·学校の健康診断で血液検査を受けると、後日たくさんの検査項目が数値結果として出てきます。糖尿、炎症、肝臓の指標値などなど。このようなからだの中の様々な物質の成分量(生体濃度)が数値として定量されることは、次のアクション(治療や体質改善)へとつなげていくために非常に重要なことです。どうやってはかっているの?その濃度に何の意味があるの?誰が決めたの?など、普段あまり気にしない、「モノをはかる」ということについて、さらには、モノをはかる時にはたくさんの「ナノ」や「バイオ」と名のつく技術がちりばめられていること、などについて私が日々関わっている部分を織り交ぜながら話題提供をできたらと思います。

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発表者:梅舘拓也さん(東京大学)

タイトル:生物に学ぶ柔らかいロボットの自律分散制御

 われわれの日常生活や自然環境とダイナミックに相互作用しながら、生物のようにしたたかにしぶとく駆動するロボットを設計するためには、そのボディに生物同等の自由度を持たせる必要がある。本講演では、そのような観点から近年注目を集めているソフトロボティクスと言う研究領域をご紹介する、またソフトロボットで課題となるのは「その膨大な自由度を実時間でいかに制御するか」である。発表者はその課題に対し、単細胞生物である真正粘菌変形体や骨格を持たないイモムシに学んだ自律分散制御則を提案してきた。本発表では、その制御則と適用範囲の広さに関してもご紹介したい。

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第16回交流会

2016年12月3日(土) 17:00 ~ 19:00

場所:吾妻交流センター

 第16回の交流会では、前半は越智岳人さん(fabcross)に、後半は川瀬宏明さん(気象庁気象研究所)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の越智さんのご講演では、いわゆるメイカーの方々の活動や実際に作っているもののご紹介などを通して、昨今話題のメイカーの世界をご紹介いただきました。今まさに日本中に広がりつつある活動や活動拠点について、現状の課題を含めてご紹介いただき、非常に面白いご講演でした。

 後半の川瀬さんのご講演では、地球温暖化の降雪への影響や地方自治体との協力案件などをご紹介いただきました。地球温暖化が進むと降雪が増える地域のお話や地方自治体とのコラボレーションにおけるご苦労など、多くの話題をご提供いただき、とても印象的なご講演でした。

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発表者:越智岳人さん(fabcross)

タイトル:今だからこそ知っておきたいMakerの世界

 私は2013年にfabcrossというメディアを立ち上げ、これまで日本各地のメイカースペースと呼ばれる市民工房やンキュベーション施設や、所属する組織を超えて新しいプロダクトを生み出す人たちを取材してきました。

 彼らは3Dプリンタやレーザー加工機といったデジタル工作機械や少量生産を受託するスタートアップ向けのサービスを駆使し、地域産業や町工場といった既存の仕組とも接点を持ちながら新しいコミュニティを作り、自分たちの作品や製品をオンライン·オフライン問わずにアウトプットしています。

 今回はそういった方たちが何を考え、どう行動し、何を生み出しているかという現状を共有するとともに、作るものを通じて外に繋がる仕組みについてお話します。

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発表者:川瀬宏明さん(気象庁気象研究所)

タイトル:気候変動予測研究のサイエンスと社会貢献

 最近、気象研究所でも一般向けの見学の一つとして、研究官による研究紹介の時間ができました。私もこれを担当していて、地球温暖化研究に関する話をしています。一般の人からは「地球温暖化は本当なのか?」「将来、寒冷化するのではないのか?」などと、ときどき質問されます。

 地球温暖化に関する研究は世界各国で行われており、それらは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によって取りまとめられています。ということはたまにニュース等で耳にするかもしれませんが、実際はどうやって研究しているのでしょうか?

 地球温暖化の研究は今や多種多様な分野に及んでいます。今回は気候変動予測研究の基本的な話や、私が直接関わっている研究プロジェクトの紹介、先日報道発表を行った「地球温暖化で豪雪の頻度が高まる」の(裏)話などをしたいと思います。また、今、この分野に求められている国や地方自治体の適応計画策定への貢献についても、これまでの経験をもとに、地方自治体と一緒に仕事をする難しさ、やり甲斐などをお話しします。

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第15回交流会

2016年9月17日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第15回の交流会では、前半は「クマムシ博士」こと堀川大樹さん(慶應義塾大学)に、後半はユーザー参加型研究発表の場であるニコニコ学会βを設立された江渡浩一郎さん(産業技術総合研究所/ニコニコ学会β)に、それぞれご講演いただきました。

 前半の堀川さんのご講演では、クマムシの特徴や魅力、なぜクマムシを研究対象とするに至ったかといった研究のお話から、研究成果や研究内容の普及活動に至るまで、様々な話題をお話しいただきました。一般の方々にいかに専門的な内容を伝えるか、分野が違う場合でも参考になる点の多いご発表でした。

 後半の江渡さんのご講演では、ニコニコ学会βのようなユーザ参加型の共創的な場について、その特徴や背景から実際の事例の紹介まで、こちらも様々な点をご紹介いただきました。「イノベーションはある程度狙って起こせる」というお話とその検証の難しさが、とても印象的でした。

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発表者:堀川大樹さん(慶應義塾大学)

タイトル:極限環境動物クマムシとアストロバイオロジー

 クマムシは体長1mmにも満たない微小な生物だが、我々ヒトと同様に神経や筋肉をもつ動物である。だがこの生物は体内からほとんどの水分を失っても死ぬことなく生存できる。この乾燥した仮死状態は乾眠とよばれる。クマムシは乾眠状態で超低温や真空などの極限環境に耐える。乾眠状態のクマムシが低軌道宇宙環境において10日間の暴露に耐えた記録もある。このようなデータから、地球外にはシンプルな単細胞型の生命体だけではなく、クマムシのように複雑な体制をもつ高等な生命体も存在することが示唆される。今回は、極限環境動物クマムシを紹介しつつ、アストロバイオロジーの今後の展望について議論したい。

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発表者:江渡浩一郎さん(産業技術総合研究所/ニコニコ学会β)

タイトル:創造的な場のつくりかた ~ニコニコ学会βとつくば横の会の経験から~

 私は、2011年に、一般市民も研究に参画するユーザー参加型研究発表の場「ニコニコ学会β」を設立した。研究機関には属していないが研究に強い情熱を持つ「野生の研究者」に活動の場を提供した。新しい学会のデザインとしてグッドデザイン賞、アルス·エレクトロニカ賞を受賞した。2011年に活動期間を5年と定めて開始し、昨年末に最終回となるシンポジウムを実施した。今年の5月には、これまでの活動をまとめた『ニコニコ学会βのつくりかた』を出版した。

 次の展開として、つくば市に在住·勤務している人を横につなぐ活動「つくば横の会」を発足した。昨年の2015年6月に第1回、今年2016年6月に「第2回つくば横の会」を開催した。ツイッターのトレンドに数日間取り上げられたり、常陽新聞の1面記事にしてもらえたりと、たくさんの反響があった。

 さて、私はそのような「創造的な場を作る手法」そのものを研究対象としている。とはいえ、曖昧模糊とした存在であり、どう形にすればいいのか考えあぐねている点もある。そのような悩みも含めて議論させていただければ幸いである。

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第14回交流会

2016年7月9日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第14回の交流会では、前半は金本成生さん(株式会社スペースシフト)に、後半は森下拓往さん(宇宙航空研究開発機構)に、それぞれご講演いただきました。

 前半の金本さんのご講演では、近年特に活発になっている民間企業主導での宇宙開発の展望や、スペースシフト社よりクラウドファンディングを通じて販売された超小型人工衛星開発キット『ARTSAT KIT』のご紹介など、宇宙開発·利用に関わる民間の動きを多方面からご講演いただきました。

 後半の森下さんのご講演では、小型人工衛星の特徴や近年の動向、JAXAの大型衛星·JAXAの小型衛星·大学の小型衛星のそれぞれの開発手法の特徴やメリット·デメリットについてご紹介いただきました。一口に”衛星開発”と言っても、開発規模や官民の組織の違いなどによって開発へのアプローチの仕方が変わることがよくわかるご講演でした。

発表者:金本成生さん(株式会社スペースシフト)

タイトル:誰でも宇宙にチャレンジできる超小型人工衛星開発キット『ARTSAT KIT』

 宇宙ビジネスは、政府や大企業によるプロジェクトから、ついに個人が関われるところまで身近になってきました。そんな中、弊社では誰でも宇宙にチャレンジできる超小型衛星キット「ARTSAT KIT」の販売を開始しました。

 近年、大学を中心に超小型衛星の開発が盛んになり、打上げも行われていますが、単純な設計ミスやトラブルで、軌道上での動作に至らないケースも後を絶ちません。本キットを使うことで、衛星の基本となる部分はキットに任せ、衛星の使い方やミッションの設計に専念することができます。

 また、これからハードウェアとしての衛星はコモディティ化し、よりソフトウェアや、アプリケーションが重要になっていきます。そのような宇宙ビジネスの変化や現状、今後の展望についてもお話しますので、自分ならどんな宇宙事業が展開できるのか、など、将来を想像するきっかけにしていただければと思います。

発表者:森下拓往さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:人工衛星のつくりかた ~小型衛星開発の経験をもとに~

 近年、人工衛星の打ち上げ機数は、実際に打ち上げた機数·打ち上げが計画されている機数ともに増え続けています。非宇宙企業による、衛星群を使ったインターネット回線の提供計画の発表、このような計画への投資計画の発表等、これまで宇宙開発とは無縁だった企業の参画も増えてきています。急速に打ち上げ機数が増えている理由の一つとして、Cubesat、Microsat等の名称で呼ばれる「小型衛星」の進歩があります。日本では、本交流会の第10回においてご紹介いただいた筑波大学のCubesatプロジェクトなど、大学による小型衛星の開発が特に盛んに行われています。

 今回の講演では、大学およびJAXAにおいて小型衛星開発に関わった経験から、「小型衛星の開発がどのように進んでいくのか?」、「JAXAと大学の小型衛星開発の似ているところ·違っているところ」、「世界と日本の小型衛星開発の似ているところ·違っているところ」など、”小型衛星の開発”を様々な方向からご紹介します。また、「なぜ今、小型衛星が世界的なブームとなっているのか?」について、学会等で収集した情報をもとに、私なりの見解もお伝えしようと思います。

第13回交流会

2016年4月9日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第13回の交流会では、前半は辻典子さん(産業技術総合研究所)に、後半は石井智さん(物質·材料研究機構)に、それぞれご講演いただきました。

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発表者:辻典子さん(産業技術総合研究所)

タイトル:小腸からの抗炎症メカニズム

 腸管免疫学や腸内細菌学が近年のトレンドとなり、暮らしへの応用が模索されています。本セミナーでは、小腸の主要な常在菌である乳酸菌や醗酵食品が腸管免疫に働きかけ、腸炎など炎症性疾患の予防に直結するしくみについて考察します。

 私たちは乳酸菌が2本鎖RNAを豊富に含み、樹状細胞の自然免疫受容体を刺激して免疫シグナル産物のひとつであるインターフェロンβの産生を誘導することを見いだしました。さらにこのインターフェロンβには、抗炎症機能を発揮して腸炎などを予防すると同時に全身性の細胞性免疫を増強するはたらきがあります。

 このような背景から、小腸における自然免疫シグナルの受容と伝達機構の解明は、健康維持や疾患の予防·治療技術の可能性を拡げます。乳酸菌などが多く含まれる醗酵食品にも、同様の経路を介した免疫賦活機能があることが期待されます。

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発表者:石井智さん(物質·材料研究機構)

タイトル:ナノ光学:平面レンズと太陽熱発生ナノ粒子を中心に

 つくば市で幼少期から高校まで過ごし、約10年ぶりにつくば市に戻ってきて光学の研究をしている講演者。講演の始めに少しだけ、つくば市で育ったことの影響を振り返りながら考えてみます。市内には様々な分野の研究所が数多くあり、多くの友人の父親がそれらの研究所で働いていて、つくば市はまさに学園都市。しかし、小さい頃はそれがどれだけ特殊なことか考えもしませんでした。

 講演の主題は、講演者の研究しているナノ光学の話題。ナノ光学では、文字通りナノスケールの構造に光が当たることによって起こる新奇な光学現象を研究します。可視光の場合、波長はおよそ400-700ナノメートルのため、例えば50ナノメートルの構造は波長より十分小さくなります。それにも関わらず、ナノ構造はその形状や材料によって時に光を強く共鳴したり異常に散乱したりします。ナノ光学の対象分野は光通信用デバイスや小型光学素子の開発にとどまらず、バイオセンシングや医療、エネルギーへの応用研究も進んでいます。講演者の研究紹介では、波長より薄い極薄平面レンズに関して、その原理と光特性をご紹介します。このレンズは設計によって強い偏光依存性を持ったり集光点を動かしたりできるものです。また、太陽熱を効率よく生み出すナノ粒子の研究も合わせて紹介します。この成果については、こちらのプレスリリース( http://www.nims.go.jp/news/press/2016/01/201601250.html )もご参照ください。

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第12回交流会

2016年1月30日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

第12回の交流会では、アカデミアにとっての「研究成果のマネジメント」をテーマにお二人の事務系職員から講演を行っていただきました。

 お一人目のご講演は平本隆輔さん(産業技術総合研究所)から、知財法務の要諦をご紹介いただきました。事務系職員が研究成果のマネジメントを担う上で必要とする正しい知財の知識とそれに基づく契約交渉の判断ポイントがわかる大変ためになるご講演でした。

 お二人目のご講演は津上哲也さん(宇宙航空研究開発機構)から、研究成果の創出者ではなく、JAXAの事務系部門の面々が戦略的に行ったマーケティングを活用して行った人工衛星のプロモーション活動の要諦をご紹介いただきました。コラボカフェや宇宙xお菓子といったユニーク事例は、大変示唆に富む興味深いご講演でした。

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発表者:平本隆輔さん(産業技術総合研究所)

タイトル:事例で学ぶ知財の基礎と知財法務

 皆さんの所属する研究所、企業、大学では、産学連携は進んでいますか?産学連携で避けては通れないのが知財の問題です。良い成果(知財)が出れば出るほど、その取り扱いは揉めがちになります。

 共同研究契約は、後になってそうした揉め事が起こらないよう、連携の前に約束事を決めるものです。

 本講演では、将来生まれるであろう研究成果である知財を守るために必要となる、知財の基礎知識·契約書の読み方·交渉の仕方といった「知財法務」の観点を、知財交渉の事例を交えつつ、お話しします。

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発表者:津上哲也さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:人工衛星プロモーション

 人工衛星の広報活動をしていると、万人に訴えかける広報に限界を感じました。そこで、”人工衛星だからこそヒットする人たちと出会える場”を探そうと、これまでと違うことを試みたら、思いがけない好評を得られる事例が出てきました。

 コラボカフェ、人工衛星観望会、お菓子商品、チョークアート。

 評判のよかった理由を考えていくと“マーケティングやマネジメントにもつながってるみたい”というものがあったので、それを紹介しつつ、みなさんのご意見も伺っていけたらと思っています。

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第11回交流会

2015年10月31日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

第11回の交流会では、前半は村木祐介さん(宇宙航空研究開発機構)に、後半は河尻耕太郎さん(産業技術総合研究所)に、それぞれご講演を行っていただきました。

 前半の村木さんのご講演では、アジア開発銀行における4年間の業務紹介、途上国での宇宙利用方法やその背景の紹介をしていただきました。リソースの限られた途上国においていかにして課題解決をするか等、様々な分野に共通する要素も多く、とても面白いご講演でした。

 後半の河尻さんのご講演では、ライフサイクルアセスメントという概念の歴史や意味のご紹介、これまでに行ってきた様々な評価の内容をご紹介いただきました。ものを使う部分だけでなく、原料の採取から廃棄までのトータルを評価するライフサイクルアセスメントの考え方について、様々な例を交えて、非常に分かりやすくご紹介いただきました。

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発表者:村木祐介さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:途上国開発援助における衛星利用‐アジア開発銀行での経験‐

 私は2011年5月から2014年5月までフィリピンマニラに本部のあるアジア開発銀行(ADB)で、人工衛星のデータをADBの途上国開発援助業務で活用するための利用促進業務を担当してきました。ADBは日欧米などの出資金をもとにアジア太平洋地域の発展途上国の道路や発電所などのインフラ開発を行う国際金融機関です。

 宇宙のことなどほとんどしらないエコノミストや非宇宙分野のエンジニアの集まるADBに単身乗り込み、宇宙技術を活用した途上国開発プロジェクトの立ち上げ、プロジェクトマネジメントを実施してきました。途上国開発分野で宇宙技術がどう使えるのかご紹介するとともに、最先端の宇宙技術を貧しい途上国で実利用導入するための苦労、ADBにいる様々な非宇宙分野の職員とのインタラクションによるトータルパッケージの開発など、4年間の苦労話を中心にご紹介したいと思います。皆さんが持つ最先端の技術をどのように実利用分野での価値創出につなげるか、について考えていただくきっかけにしていただければと思います。

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発表者:河尻耕太郎さん(産業技術総合研究所)

タイトル:環境問題の「見える化」 -ライフサイクルアセスメントとその応用、そして新たな挑戦-

 ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment: LCA)は、環境問題を「見える化」し、効果的な解決策を検討するための方法論として発展してきました。LCAによって、俯瞰的な視座から問題構造を把握し、目に見えない環境負荷物質の流れを定量化し、製品やサービスなどによってもたらされる社会への環境影響を定量的に評価することが可能になります。それはまさにデータサイエンスの極致です。

 近年では、LCAは、ライフサイクル思考(Life Cycle Thinking)、あるいはライフサイクルマネジメント(Life Cycle Management)として、俯瞰的に問題構造を捉え、解決策を検討するための方法論として抽象化·一般化されつつあります。その方法論は、環境分野のみならず、ビジネスや行政にも広く応用されつつあり、意思決定、問題解決のための強力なツールとなる可能性を秘めています。

 本講演では、環境問題とLCAの歴史について簡単に触れるとともに、LCAの考え方について説明した後、現在の最新の研究テーマ、あるいは実ビジネスへの展開について紹介します。本講演では、環境分野を題材に議論しますが、LCAの考え方は、環境分野のみならず、様々な分野に応用可能です。

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第10回交流会

2015年8月8日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

第10回の交流会では、前半は花田智さん(産業技術総合研究所)に、後半は保田敦司さん(筑波大学)に、それぞれご講演を行っていただきました。

 前半の花田さんには、ご自身で新しく発見した微生物や、微生物が引き起こす”変敗”の実際に起きた様々な例や仕組みといった内容をご講演いただきました。身近に起きている様々な現象に微生物が関わっていることを知ることができた、大変おもしろいご講演でした。

 後半の保田さんには、筑波大学の学生が中心となって開発している小さな人工衛星”Cubesat”に関するご講演をいただきました。一号機で得られた知見をもとにして現在二号機の開発中とのことで、将来人工衛星が打ち上がるのが楽しみになるご講演でした。

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発表者:花田智さん(産業技術総合研究所)

タイトル:変敗捜査官の事件簿 ―食品変敗と原因微生物―

 食品と微生物の良好な関係は様々な発酵食品に見られます。麹菌や酵母によって行われる味噌やお酒の醸造、乳酸菌によって作られるヨーグルト、チーズなど微生物が食品の風味を良くしたり、長期間保存するのに役立ってる例は枚挙に暇がありません。その一方で、微生物によって食品の風味が落ちたり、変色してしまったり、腐敗してしまうこともしばしば起きてしまいます。この様な食品の劣化は「食品変敗」と呼ばれていますが、それがどの様な微生物によって引き起こされたのかを科学的分析手法によって解明してきた課程を、「変敗捜査官の事件簿」と銘打ち、ミステリ仕立て(?)でお話ししたいと考えています。

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発表者:保田敦司さん(筑波大学)

タイトル:超小型人工衛星「CubeSat」の新たな可能性~CubeSatと宇宙教育~

 みなさんは「CubeSat」というものをご存知でしょうか.

CubeSatとは,1辺10cm,重さ数kgというごく小さな人工衛星のことを指します.

大型衛星に比べてコストの低さや開発期間の短さから,世界中の多くの大学や企業,研究機関が開発を行っています.

 このCubeSatが世界で初めて打ち上がったのは2003年6月で,それから現在に至るまで,100機以上のCubeSatが世界中から打ち上げられました.

 これらCubeSatは小さな衛星であるにも関わらず,数多くの科学的·技術的成果を挙げ,今やCubeSat開発は世界中でホットな研究の一つとなりつつあります.

 今回はそのCubeSatの新たな使い方として,「CubeSatを宇宙教育に利用してみるのはどうだろうか.」という点に焦点を当てたお話をしたいと考えています.

 最近は子どもたちの理科離れが騒がれている一方,2010年の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還をきっかけに,子どもや大人を含めた幅広い年代から,宇宙や人工衛星への関心が集まっています.

 そんな中,このCubeSatを宇宙教育に利用することで,理科教育や人材育成の効果が期待されると考えられます.

 今回は「CubeSat」「宇宙教育」という2つのキーワードのもと,私が所属する筑波大学「結」プロジェクトのCubeSat「ITF-1」「ITF-2」を例に,CubeSatの宇宙教育への応用について紹介したいと思います.

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第9回交流会

2015年6月27日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

第9回の交流会では、前半は佐藤那津未さん(Natsumi Satoh Global Communication Consulting)に、後半は岩瀬英治さん(早稲田大学)に、それぞれご講演をしていただきました。

 佐藤さんには、「英語感覚」と「日本語感覚」の違い、それが元で生じてしまうコミュニケーションのギャップについて、分かりやすい例を交えてご紹介いただきました。言われてみれば覚えのある内容も多く、言語感覚という普段は意識しないものを意識していくきっかけになるご講演でした。

 岩瀬さんには、「マイクロマシン」や「MEMS」といった、携帯電話など身の回りのものにも使われている「小さな機械」についてご講演いただきました。小さな世界では今の私たちの感覚がそのまま通用しなくなることや、そもそもこのような小さな機械をどのように作るのかといったことなど、いろいろな側面から「小さな機械」についてご紹介いただきました。

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発表者:佐藤那津未さん(Natsumi Satoh Global Communication Consulting)

タイトル:あなたのプレゼンスをあげるグローバルコミュニケーション

 英語でコミュニケーションをとる時、『英語感覚』と『日本語感覚』の違いどれくらい意識してますか?もしあなたの答えが『NO』もしくは『???』の場合は、あなたは論文や学会発表を通して、ポテンシャルを十分に発揮しきれていない可能性大です。

 『英語感覚』と『日本語感覚』の相違が引き起こす、致命的なミスコミュニケーションやデッドコミュニケーション(全くコミュニケーションが成り立っていない状態)。そんな悲劇にあなたが巻き込まれないためにも、グローバルコミュニケーション力を培う上で日本人が陥りやすい『感覚のズレ』ポイントの傾向と対策について紹介していきます。

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発表者:岩瀬英治さん(早稲田大学)

タイトル:小さな機械の小さな物理 ~マイクロマシンのお話~

「アリは壁を上れるのにゾウが出来ないのはどうして?」

「水は少量だと球状の“水玉”になるのに、多量だとそうならず“水溜り”になるのはなぜ?」

皆さんはこれらの疑問に答えられるでしょうか?

 近年、小さいものを作る技術は非常に発達し、髪の毛の太さ程度の歯車や構造を作れるようになってきています。これは「マイクロマシン」「MEMS(Micro-electro-mechanical Systems)」と呼ばれ、スマートフォンや自動車にはこの技術を使ったセンサーなどが使われています。しかしながら、このような「小さな機械」を作るときに、大きな機械の設計図をそのまま小さくして作れば動くというわけではありません。これは、最初に挙げた身近な例からも想像できように、小さな機械·小さな世界に特有の物理現象がその前に立ちはだかってくるためです。小さな機械を作るには何を考えたら良いのか、小さな機械はどんな形をしているのか、大きさが変わるだけで世界がどう変わるのかなどについてお話したいと思っています。

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