第13回交流会

2016年4月9日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第13回の交流会では、前半は辻典子さん(産業技術総合研究所)に、後半は石井智さん(物質·材料研究機構)に、それぞれご講演いただきました。

———

発表者:辻典子さん(産業技術総合研究所)

タイトル:小腸からの抗炎症メカニズム

 腸管免疫学や腸内細菌学が近年のトレンドとなり、暮らしへの応用が模索されています。本セミナーでは、小腸の主要な常在菌である乳酸菌や醗酵食品が腸管免疫に働きかけ、腸炎など炎症性疾患の予防に直結するしくみについて考察します。

 私たちは乳酸菌が2本鎖RNAを豊富に含み、樹状細胞の自然免疫受容体を刺激して免疫シグナル産物のひとつであるインターフェロンβの産生を誘導することを見いだしました。さらにこのインターフェロンβには、抗炎症機能を発揮して腸炎などを予防すると同時に全身性の細胞性免疫を増強するはたらきがあります。

 このような背景から、小腸における自然免疫シグナルの受容と伝達機構の解明は、健康維持や疾患の予防·治療技術の可能性を拡げます。乳酸菌などが多く含まれる醗酵食品にも、同様の経路を介した免疫賦活機能があることが期待されます。

———

発表者:石井智さん(物質·材料研究機構)

タイトル:ナノ光学:平面レンズと太陽熱発生ナノ粒子を中心に

 つくば市で幼少期から高校まで過ごし、約10年ぶりにつくば市に戻ってきて光学の研究をしている講演者。講演の始めに少しだけ、つくば市で育ったことの影響を振り返りながら考えてみます。市内には様々な分野の研究所が数多くあり、多くの友人の父親がそれらの研究所で働いていて、つくば市はまさに学園都市。しかし、小さい頃はそれがどれだけ特殊なことか考えもしませんでした。

 講演の主題は、講演者の研究しているナノ光学の話題。ナノ光学では、文字通りナノスケールの構造に光が当たることによって起こる新奇な光学現象を研究します。可視光の場合、波長はおよそ400-700ナノメートルのため、例えば50ナノメートルの構造は波長より十分小さくなります。それにも関わらず、ナノ構造はその形状や材料によって時に光を強く共鳴したり異常に散乱したりします。ナノ光学の対象分野は光通信用デバイスや小型光学素子の開発にとどまらず、バイオセンシングや医療、エネルギーへの応用研究も進んでいます。講演者の研究紹介では、波長より薄い極薄平面レンズに関して、その原理と光特性をご紹介します。このレンズは設計によって強い偏光依存性を持ったり集光点を動かしたりできるものです。また、太陽熱を効率よく生み出すナノ粒子の研究も合わせて紹介します。この成果については、こちらのプレスリリース( http://www.nims.go.jp/news/press/2016/01/201601250.html )もご参照ください。

———