2015年10月31日(土) 15:00 ~ 17:30
場所:吾妻交流センター
第11回の交流会では、前半は村木祐介さん(宇宙航空研究開発機構)に、後半は河尻耕太郎さん(産業技術総合研究所)に、それぞれご講演を行っていただきました。
前半の村木さんのご講演では、アジア開発銀行における4年間の業務紹介、途上国での宇宙利用方法やその背景の紹介をしていただきました。リソースの限られた途上国においていかにして課題解決をするか等、様々な分野に共通する要素も多く、とても面白いご講演でした。
後半の河尻さんのご講演では、ライフサイクルアセスメントという概念の歴史や意味のご紹介、これまでに行ってきた様々な評価の内容をご紹介いただきました。ものを使う部分だけでなく、原料の採取から廃棄までのトータルを評価するライフサイクルアセスメントの考え方について、様々な例を交えて、非常に分かりやすくご紹介いただきました。
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発表者:村木祐介さん(宇宙航空研究開発機構)
タイトル:途上国開発援助における衛星利用‐アジア開発銀行での経験‐
私は2011年5月から2014年5月までフィリピンマニラに本部のあるアジア開発銀行(ADB)で、人工衛星のデータをADBの途上国開発援助業務で活用するための利用促進業務を担当してきました。ADBは日欧米などの出資金をもとにアジア太平洋地域の発展途上国の道路や発電所などのインフラ開発を行う国際金融機関です。
宇宙のことなどほとんどしらないエコノミストや非宇宙分野のエンジニアの集まるADBに単身乗り込み、宇宙技術を活用した途上国開発プロジェクトの立ち上げ、プロジェクトマネジメントを実施してきました。途上国開発分野で宇宙技術がどう使えるのかご紹介するとともに、最先端の宇宙技術を貧しい途上国で実利用導入するための苦労、ADBにいる様々な非宇宙分野の職員とのインタラクションによるトータルパッケージの開発など、4年間の苦労話を中心にご紹介したいと思います。皆さんが持つ最先端の技術をどのように実利用分野での価値創出につなげるか、について考えていただくきっかけにしていただければと思います。
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発表者:河尻耕太郎さん(産業技術総合研究所)
タイトル:環境問題の「見える化」 -ライフサイクルアセスメントとその応用、そして新たな挑戦-
ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment: LCA)は、環境問題を「見える化」し、効果的な解決策を検討するための方法論として発展してきました。LCAによって、俯瞰的な視座から問題構造を把握し、目に見えない環境負荷物質の流れを定量化し、製品やサービスなどによってもたらされる社会への環境影響を定量的に評価することが可能になります。それはまさにデータサイエンスの極致です。
近年では、LCAは、ライフサイクル思考(Life Cycle Thinking)、あるいはライフサイクルマネジメント(Life Cycle Management)として、俯瞰的に問題構造を捉え、解決策を検討するための方法論として抽象化·一般化されつつあります。その方法論は、環境分野のみならず、ビジネスや行政にも広く応用されつつあり、意思決定、問題解決のための強力なツールとなる可能性を秘めています。
本講演では、環境問題とLCAの歴史について簡単に触れるとともに、LCAの考え方について説明した後、現在の最新の研究テーマ、あるいは実ビジネスへの展開について紹介します。本講演では、環境分野を題材に議論しますが、LCAの考え方は、環境分野のみならず、様々な分野に応用可能です。
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