第24回交流会

2018年11月10日(土) 16:00 ~ 18:30

場所:吾妻交流センター

 第24回の交流会では、前半は安部眞史さん(宇宙航空研究開発機構)に、後半は森田雅宗さん(産業技術総合研究所)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の安部さんのご講演では、JAXAのいぶき2号(GOSAT-2)プロジェクトの立ち上げ当初から打上げまでの全ての経験から、衛星開発プロジェクトの特徴や今後に向けた改善点などをご紹介いただきました。異なる所属の人間が集まると多かれ少なかれ起きるであろう事例や改善方法の提案までお話しいただけて、とても面白いご講演でした。

 後半の森田さんのご講演では、人工的に細胞膜を模擬した”人工細胞”を使った研究に関するお話しをしていただきました。人工的に細胞膜を作り、その挙動を理解することで実際の細胞への理解を深めるという手法について、実際の動画を交えてご紹介いただき、非常に興味深いご講演でした。

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発表者:安部眞史さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:人工衛星プロジェクトを通して見えた課題

 2014年に人工衛星GOSAT-2プロジェクトにアサインされて早や五年、電気システム及び品質保証の担当として携わってきたGOSAT-2が打上げを迎えました。

 プロジェクトの立上げから打上げまで、開発全期間を通して関わったことで様々な課題や改善点が見えてきました。

当日はそんな経験から下記のようなことをお話しします。

·プロジェクト実行者として必要な能力、

·支援者として実行者を支えるために必要な能力、

·組織としてのあるべき支援体制

·おまけ:研究開発機関の広報戦略~カンヌ広告賞受賞の背景~

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発表者:森田雅宗さん(産業技術総合研究所)

タイトル:人工細胞内で細胞培養?

 生命とは?その起源は?このような真理·学問の探求において,近年,試験管内で生体分子から細胞(人工細胞)を創る試みが世界中で行われております.

 「人工細胞とは何か?」生命科学に馴染みのない方にもわかりやすく解説させていただきます.

 また,私が取り組んでいる人工細胞の中で実際の細胞を培養する研究·技術についてもわかりやすく紹介させていただきます.

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第23回交流会

2018年9月8日(土) 16:00 ~ 18:30

場所:吾妻交流センター

 第23回の交流会では、前半は穴原琢摩さん(宇宙航空研究開発機構)に、後半は金賢徹さん(産業技術総合研究所·東京農工大学)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の穴原さんのご講演では、人工衛星から発射したマイクロ波の反射を用いて地球を観測する合成開口レーダーについて、その原理や様々な利用方法をご紹介いただきました。インフラ施設の経年変化の抽出のようなまさに社会問題になりつつある課題へのアプローチについてもご紹介いただけ、とても面白いご講演でした。

 後半の金さんのご講演では、”がん”の定義や現状の医療における課題、それを解決するための研究についてご紹介いただきました。健康診断で採取する程度の量の血液からがん細胞を見つけだす装置の開発についてのお話しなどもあり、非常に興味深いご講演でした。

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発表者:穴原琢摩さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:レーダー衛星とは?

 合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar; SAR)を用いて観測を行う衛星についての諸々をお話しします。SARの観測データを使うことで、布で覆われて隠れているところを透視して下が見えたり、観測するビルの高さはメートル精度でしか測れないのにビルの伸縮(高さの差)はミリメートル精度で測れたり、世界中の原油備蓄量を観測して先物取引の予測に使えそうになったりしています。

 こういう衛星が今も世界中を飛び回っているんだなー、ぐらいにご紹介させて頂ければと思います。

 専門は画像解析·統計解析なので、こちらを多めにご紹介する予定です。

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発表者:金賢徹さん(産業技術総合研究所·東京農工大学)

タイトル:がんとはどんな病気か?これからのがん診断技術とは?

 日本では2人に1人以上が罹患し、未だに死因ナンバーワンである「がん」。がんとはどのような病気か、なぜ治療が難しいのか、今後のがん克服に向けて、どのような課題を解決せねばならないのかについて、普段は生命科学に馴染みの少ない方にも分かっていただけるよう、まずはお話します。

 また、がんの早期発見、高精度診断に向けて、様々な技術の開発が今日も行われています。微細加工技術や機能的微粒子、走査型プローブ顕微鏡も駆使するような、最新のがん診断技術について、簡単な技術原理の解説を含めて紹介します。

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第22回交流会

2018年6月30日(土) 16:00 ~ 18:30

場所:吾妻交流センター

 第22回の交流会では、前半は名倉勝さん(株式会社経営共創基盤)に、後半は保高徹生さん(産業技術総合研究所)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の名倉さんのご講演では、昨今世界的に注目され様々な活動が実践されているオープンイノベーション、イノベーションを生み続けるためのエコシステムにについてご紹介いただきました。イノベーションに関わる施策の日米比較などもあり、これからの世界や日本の動向を考えるきっかけの多い、とても面白いご講演でした。

 後半の保高さんのご講演では、福島でのこれまでの活動や関連した研究についてご紹介いただきました。現場の研究者の目で見た福島の状況、除染等に関わる話題等、聞き応えのあるお話が満載のご講演でした。

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発表者:名倉勝さん(株式会社経営共創基盤)

タイトル:イノベーション創出のための政策とエコシステム

 新しい技術やアイデアから革新的な製品やサービスを生み出し社会にインパクトを与える”イノベーション”に多くの企業が関心を持ち、国の政策でもイノベーションを目的としたものが数多く打ち出されています。

 そして、近年はイノベーションを生み出す環境である、”イノベーション·エコシステム”をどのように構築するのか、ということが行政でも話題になっています。

 今回の講演では、私が文部科学省在籍時に携わったイノベーション関係政策や、イノベーション創出が盛んなボストンで中心的な役割を果たしているマサチューセッツ工科大学周辺のイノベーション·エコシステムをご紹介します。

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発表者:保高徹生さん(産業技術総合研究所)

タイトル:大規模環境災害の研究·実務に関する7年間の個人的経験

 私は、農業土木、環境コンサルタント、環境リスク学、地盤環境工学などの分野を学生、民間企業社員、研究者として、土壌汚染や廃棄物等の一般的にはあまり好まれないものを対象に活動してきた。

 2011年に研究者になった後は、ご縁があり放射性セシウムの計測技術、環境動態評価、廃棄物管理、避難指示区域の住民との対話、モニタリングに関わる国際的な精度評価などの実務·研究をさせて頂いている。

 自分の研究分野とは異なる分野の研究も多いが、避難指示区域の道路でたまたま立ち話をした方の存在であったり、所内の研究者からの誘いであったり、隣の研究所の偉い人からの要請であったり、自治体や国からの依頼であったり、巻き込み、巻き込まれつつ、色んな人に繋がれ、繋ぐことをしてきた7年であった。

 今回は、個人的な経験を振り返えるとともに、福島の美味しいものを(画像で)紹介したいと思う。

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第21回交流会

2018年4月14日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第21回の交流会では、前半はくとのさん(ニコニコ学会β交流協会副会長)に、後半は中川幸司さん(北京大学修了、中国研究者、マッドサイエンティスト。)にそれぞれご講演いただきました。

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発表者:くとのさん(ニコニコ学会β交流協会副会長)

タイトル:「作る人文学」とニコニコ学会βからの試み―多様性からのイノベーションを目指して―

 私の本来の専門は哲学·思想の研究だが、昨今こうした人文学の領域がますます厳しい状況に追い込まれているのはよく知られている通りである。筑波大学でのロボットコンテスト参戦など一風変わった実践をしてきた私としては、人文学の新展開に何ができるかを考え、哲学·思想の概念を作品として実装·表現する「作る人文学」という試みを2011年以来行ってきた。2012年から参画してきたニコニコ学会βでは他分野との共同をよりいっそう深めるとともに、つくばでの尖った研究者の横の連携を深める活動も進めている。

 こうした活動のなかで見えてきたのは、学問領域や人そのものといったさまざまな要素における多様性(ダイバーシティ)をテコにして、(広い意味での)イノベーションをどう起こしていくかというテーマである。つくばという場所の持つ強みはその素地にあるはずだが、現状では十分に活かされていないであろう。本務校での最近の活動も紹介しながら、このような点を考えてみたい。

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発表者:中川幸司さん(北京大学修了、中国研究者、マッドサイエンティスト。)

タイトル:『極東のビッグブラザー』~チャイナ最新政治経済諸論。巨大なガラパゴスの門が開かれた。

 北京大学で日本人初の経営学博士号を得た異端研究者の中川コージが、ペキノロジーからチャイナビジネス最先端まで、莫大なチャイナネタからつまみ食い形式でご紹介いたします。

 軍事·安全保障だけにとらわれない紅い国に対する観察眼とは? 巨大なガラパゴスで成長した極楽鳥巨大企業はどこへ羽ばたく? 米中の超大国化と、地域大国に舵を切ったロシアの関係は? 『一帯一路プラス』のチャイナ引力は欧州をどこまで引きつけるのか? 日本のマスメディアで報道され難い日中外交ルートの裏事情は? 宇宙&サイバー領域への2030年までの野望とは? 人工知能補完型プロレタリア独裁国家は紅い千年帝国となりうるのか?などなど、興奮できるテーマが満載です。

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第20回交流会

2018年2月24日(土) 16:00 ~ 18:00

場所:吾妻交流センター

 第20回の交流会では、前半は増田勇野さん(宇宙開発支援企業)に、後半は渡辺知恵美さん(筑波大学、産業技術大学院大学)にそれぞれご講演いただきました。

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発表者:増田勇野さん(宇宙開発支援企業)

タイトル:エンターテイメントのために疎かにされている宇宙技術

 特に難しいことはお話しません。

 題材として宇宙開発関連の映画をネタに、皆様の専門性もヒアリングし有人宇宙開発の設計/運用思想をお話したいと思います。

 丁度今は金井宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)滞在中ですので、映画や作品のみでなくニュースでも宇宙開発を見かけた際、少しでも日常の中で宇宙開発を面白く捉えられるエナーテイメント観点をお伝え出来ればと思います。

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発表者:渡辺知恵美さん(筑波大学、産業技術大学院大学)

タイトル:技術者が輝くチーム開発、そして子育てと働き方改革

 私は筑波大学でenPiTというチームによるシステム開発教育プロジェクトに関わっています。

 私自身はこのプロジェクトでアジャイル開発に大きな影響を受けました。

 私が惹かれたのは、技術者を含めた全ての働き手が生き生きと力を発揮できる世界をそこに垣間見たからです。

 フレームワークの根底にある思想として技術者が顧客と経営·運営と一丸となり主体的に良い製品を作り出す考え方が徹底されています。

 また製品の価値を最適化すると同時に、従業者が健康でパフォーマンスを発揮できる環境が守られるように考えられています。

 また、この考え方はソフトウエア開発に限らず全ての働き方にも広げられることを、自らの出産·育児の経験や小学生へのプログラミング教育などに関わることで実感しています。

 また研究や大学での教育活動でもこの考え方を取り入れて少しずつ改善をしています。

 私自身の経験なども踏まえた話や、いくつかの教育に関する活動を通じて私が目指していることなどを率直にお話しし、みなさんと議論できたらと思っています。

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第19回交流会

2017年11月18日(土) 16:00 ~ 18:00

場所:吾妻交流センター

 第19回の交流会では、前半は原彰彦さん(ソフトバンク株式会社)に、後半は鎌田哲生さん(特許庁)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の原さんのご講演では、昨今よく耳にする”働き方改革”について、様々な企業の取り組みを含め、どのようなことが行われているかをご紹介いただきました。自分たちの日々の働き方を見つめ直し、どのような公私のバランスを個々人が目指したいのかを考える貴重な機会をご提供いただきました。

 後半の鎌田さんのご講演では、特許の手続きが所要時間、具体的に特許庁ではどのような観点で作業が行われているか等をご紹介いただきました。国内外の動向や業種による特許に対する要望の違いなど、特許制度を管轄する側ならではの情報を多くご提供いただけた、とても面白いご講演でした。

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発表者:原彰彦さん(ソフトバンク株式会社)

タイトル:自分自身の働き方”改善”を考えてみよう

 最近話題の「働き方改革」というキーワード、 皆さんはどのように感じていますか?

 フレックス勤務、残業削減、同一労働同一賃金、定時退社、在宅勤務、勤務間インターバル、プレミアムフライディなど様々な施策が取り上げられていて、組織·個人の双方から、働き方を抜本的に見直す機会が訪れています。

 ただし、「改革」と言われると『難しい、ハードルが高い』 というイメージが先行し、何から始めればよいの··と悩んでしまう方も多いのでは?と思います。

 そこで少し言葉を易しくして、働き方”改善”というタイトルで原が取り組んでいることを例として、皆さんにご紹介し、積極的に議論·意見交換してみたいと思います。

 当日は業務内容·趣味などの自己紹介も交えて、

  ①会社が導入している働き方改革の制度

  ②制度を使って私自身が取り組んでいること(イントラネット記事に事例として2度掲載されました)

についてお話します。

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発表者:鎌田哲生さん(特許庁)

タイトル:特許と特許情報

 特許というと取っつきにくいイメージがありますが、特許そのものを情報として考えると、いろいろと見えてくるものがあります。

 特許にまつわる最近のトピックと、特許情報について、お話ししたいと思います。

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第18回交流会

2017年6月10日(土) 15:30 ~ 18:00

場所:吾妻交流センター

 第18回の交流会では、前半は岡村彩乃さん(株式会社AWAKE GATE)に、後半は野田篤司さん(宇宙航空研究開発機構)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の岡村さんのご講演では、ご自身の実体験と共に人材育成やキャリアプラン構築についてご紹介いただきました。また、人材育成業界の中でAWAKE GATE社がどのような取り組みを行なってるかについても、具体的な例と共にご説明いただきました。個々人の現在や将来を考える上でとても参考になるご講演でした。

 後半の野田さんのご講演では、新しいアイデアを生みだすための部屋”創発工房”や低軌道衛星”SLATS”の話題をもとに、アイデアの発想法や心構えについてご講演いただきました。「いいアイデアを生むためには日頃からアイデアを出す練習をし、感性を磨いていくことが重要である」という点が印象的な、非常に面白いご講演でした。

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発表者:岡村彩乃さん(株式会社AWAKE GATE)

タイトル:ひとりひとりと向き合う人材育成

 日々仕事に励む我々ですが、目の前のことに追われ自分をどうキャリアアップしていくか迷うことはないでしょうか?

 今回の講演者である岡村さん自身は学生時代は筑波大学にて宇宙工学を学び、その後ご自身の進む先について悩まれ、「派遣」と「紹介」の機能を合わせ持った「人財育成会社 LIFEJUNCTION」を立ち上げられました。

 ここでは、ひとりひとりに向きあい、企業の需要、人材の需要をみながら、キャリアアップ方法を提案されています。

 ‘’イマ、企業に求められる人材とは?!‘’ 

人材教育をテーマにそんな話題提供をさせていただきます。

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発表者:野田篤司さん(宇宙航空研究開発機構)

タイトル:突拍子もないアイディアをカタチにする

 今年度またひとつ衛星が打ちあがります。その名も「‘’Super Low Altitude‘’ Test Satellite:SLATS」。その名の通り超低高度で飛行し、地上に近い分、より地球を高い解像度で観測することができるようになります。しかし超低高度(*1)での運用は、大気抵抗の影響が大きく軌道維持することが困難のため、これまで難しいといわれていました。

 ここで、できる!と新しいアイディアを提案されたのが野田さんです。

 SLATS打ち上げを前にし、プロジェクトの立ち上げについてにお話を伺います。

 またこのほかにも小型衛星の立ち上げから、最近は創発工房という研究者·エンジニアが自由に発想を展開できる部屋も作られました。「アイディアをカタチにする」をテーマに様々な話題提供させていただけたらと思います。

(*1) SLATSは一番低い高度で180kmを飛行、通常衛星は高度600~800kmを飛行

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第17回交流会

2017年2月11日(土) 17:00 ~ 19:30

場所:吾妻交流センター

 第17回の交流会では、前半は加藤大さん(産業技術総合研究所)に、後半は梅舘拓也さん(東京大学)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の加藤さんのご講演では、身近に普及しつつある”その場医療”におけるセンシングの意義やその難しさ、その中でのナノ技術の活用方法などをご紹介いただきました。微小なものを作れること、わずかなものを測定できることによって初めて可能となる世界がわかる、とても面白いご講演でした。

 後半の梅舘さんのご講演では、”やわらかいロボット”の概念の着想から実際のロボットへの実装まで、これまでに行ってきた様々な研究の内容をふまえてご紹介いただきました。生物をモデルとしたロボットの方が環境の変化への対応が容易になる場合がある等、実際の実験の動画を交えてご紹介いただき、非常に興味深いご講演でした。

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発表者:加藤大さん(産業技術総合研究所)

タイトル:モノをはかる: ナノとバイオを織り交ぜた研究の話

 病院や職場·学校の健康診断で血液検査を受けると、後日たくさんの検査項目が数値結果として出てきます。糖尿、炎症、肝臓の指標値などなど。このようなからだの中の様々な物質の成分量(生体濃度)が数値として定量されることは、次のアクション(治療や体質改善)へとつなげていくために非常に重要なことです。どうやってはかっているの?その濃度に何の意味があるの?誰が決めたの?など、普段あまり気にしない、「モノをはかる」ということについて、さらには、モノをはかる時にはたくさんの「ナノ」や「バイオ」と名のつく技術がちりばめられていること、などについて私が日々関わっている部分を織り交ぜながら話題提供をできたらと思います。

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発表者:梅舘拓也さん(東京大学)

タイトル:生物に学ぶ柔らかいロボットの自律分散制御

 われわれの日常生活や自然環境とダイナミックに相互作用しながら、生物のようにしたたかにしぶとく駆動するロボットを設計するためには、そのボディに生物同等の自由度を持たせる必要がある。本講演では、そのような観点から近年注目を集めているソフトロボティクスと言う研究領域をご紹介する、またソフトロボットで課題となるのは「その膨大な自由度を実時間でいかに制御するか」である。発表者はその課題に対し、単細胞生物である真正粘菌変形体や骨格を持たないイモムシに学んだ自律分散制御則を提案してきた。本発表では、その制御則と適用範囲の広さに関してもご紹介したい。

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第16回交流会

2016年12月3日(土) 17:00 ~ 19:00

場所:吾妻交流センター

 第16回の交流会では、前半は越智岳人さん(fabcross)に、後半は川瀬宏明さん(気象庁気象研究所)にそれぞれご講演いただきました。

 前半の越智さんのご講演では、いわゆるメイカーの方々の活動や実際に作っているもののご紹介などを通して、昨今話題のメイカーの世界をご紹介いただきました。今まさに日本中に広がりつつある活動や活動拠点について、現状の課題を含めてご紹介いただき、非常に面白いご講演でした。

 後半の川瀬さんのご講演では、地球温暖化の降雪への影響や地方自治体との協力案件などをご紹介いただきました。地球温暖化が進むと降雪が増える地域のお話や地方自治体とのコラボレーションにおけるご苦労など、多くの話題をご提供いただき、とても印象的なご講演でした。

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発表者:越智岳人さん(fabcross)

タイトル:今だからこそ知っておきたいMakerの世界

 私は2013年にfabcrossというメディアを立ち上げ、これまで日本各地のメイカースペースと呼ばれる市民工房やンキュベーション施設や、所属する組織を超えて新しいプロダクトを生み出す人たちを取材してきました。

 彼らは3Dプリンタやレーザー加工機といったデジタル工作機械や少量生産を受託するスタートアップ向けのサービスを駆使し、地域産業や町工場といった既存の仕組とも接点を持ちながら新しいコミュニティを作り、自分たちの作品や製品をオンライン·オフライン問わずにアウトプットしています。

 今回はそういった方たちが何を考え、どう行動し、何を生み出しているかという現状を共有するとともに、作るものを通じて外に繋がる仕組みについてお話します。

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発表者:川瀬宏明さん(気象庁気象研究所)

タイトル:気候変動予測研究のサイエンスと社会貢献

 最近、気象研究所でも一般向けの見学の一つとして、研究官による研究紹介の時間ができました。私もこれを担当していて、地球温暖化研究に関する話をしています。一般の人からは「地球温暖化は本当なのか?」「将来、寒冷化するのではないのか?」などと、ときどき質問されます。

 地球温暖化に関する研究は世界各国で行われており、それらは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によって取りまとめられています。ということはたまにニュース等で耳にするかもしれませんが、実際はどうやって研究しているのでしょうか?

 地球温暖化の研究は今や多種多様な分野に及んでいます。今回は気候変動予測研究の基本的な話や、私が直接関わっている研究プロジェクトの紹介、先日報道発表を行った「地球温暖化で豪雪の頻度が高まる」の(裏)話などをしたいと思います。また、今、この分野に求められている国や地方自治体の適応計画策定への貢献についても、これまでの経験をもとに、地方自治体と一緒に仕事をする難しさ、やり甲斐などをお話しします。

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第15回交流会

2016年9月17日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第15回の交流会では、前半は「クマムシ博士」こと堀川大樹さん(慶應義塾大学)に、後半はユーザー参加型研究発表の場であるニコニコ学会βを設立された江渡浩一郎さん(産業技術総合研究所/ニコニコ学会β)に、それぞれご講演いただきました。

 前半の堀川さんのご講演では、クマムシの特徴や魅力、なぜクマムシを研究対象とするに至ったかといった研究のお話から、研究成果や研究内容の普及活動に至るまで、様々な話題をお話しいただきました。一般の方々にいかに専門的な内容を伝えるか、分野が違う場合でも参考になる点の多いご発表でした。

 後半の江渡さんのご講演では、ニコニコ学会βのようなユーザ参加型の共創的な場について、その特徴や背景から実際の事例の紹介まで、こちらも様々な点をご紹介いただきました。「イノベーションはある程度狙って起こせる」というお話とその検証の難しさが、とても印象的でした。

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発表者:堀川大樹さん(慶應義塾大学)

タイトル:極限環境動物クマムシとアストロバイオロジー

 クマムシは体長1mmにも満たない微小な生物だが、我々ヒトと同様に神経や筋肉をもつ動物である。だがこの生物は体内からほとんどの水分を失っても死ぬことなく生存できる。この乾燥した仮死状態は乾眠とよばれる。クマムシは乾眠状態で超低温や真空などの極限環境に耐える。乾眠状態のクマムシが低軌道宇宙環境において10日間の暴露に耐えた記録もある。このようなデータから、地球外にはシンプルな単細胞型の生命体だけではなく、クマムシのように複雑な体制をもつ高等な生命体も存在することが示唆される。今回は、極限環境動物クマムシを紹介しつつ、アストロバイオロジーの今後の展望について議論したい。

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発表者:江渡浩一郎さん(産業技術総合研究所/ニコニコ学会β)

タイトル:創造的な場のつくりかた ~ニコニコ学会βとつくば横の会の経験から~

 私は、2011年に、一般市民も研究に参画するユーザー参加型研究発表の場「ニコニコ学会β」を設立した。研究機関には属していないが研究に強い情熱を持つ「野生の研究者」に活動の場を提供した。新しい学会のデザインとしてグッドデザイン賞、アルス·エレクトロニカ賞を受賞した。2011年に活動期間を5年と定めて開始し、昨年末に最終回となるシンポジウムを実施した。今年の5月には、これまでの活動をまとめた『ニコニコ学会βのつくりかた』を出版した。

 次の展開として、つくば市に在住·勤務している人を横につなぐ活動「つくば横の会」を発足した。昨年の2015年6月に第1回、今年2016年6月に「第2回つくば横の会」を開催した。ツイッターのトレンドに数日間取り上げられたり、常陽新聞の1面記事にしてもらえたりと、たくさんの反響があった。

 さて、私はそのような「創造的な場を作る手法」そのものを研究対象としている。とはいえ、曖昧模糊とした存在であり、どう形にすればいいのか考えあぐねている点もある。そのような悩みも含めて議論させていただければ幸いである。

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