第15回交流会

2016年9月17日(土) 15:00 ~ 17:30

場所:吾妻交流センター

 第15回の交流会では、前半は「クマムシ博士」こと堀川大樹さん(慶應義塾大学)に、後半はユーザー参加型研究発表の場であるニコニコ学会βを設立された江渡浩一郎さん(産業技術総合研究所/ニコニコ学会β)に、それぞれご講演いただきました。

 前半の堀川さんのご講演では、クマムシの特徴や魅力、なぜクマムシを研究対象とするに至ったかといった研究のお話から、研究成果や研究内容の普及活動に至るまで、様々な話題をお話しいただきました。一般の方々にいかに専門的な内容を伝えるか、分野が違う場合でも参考になる点の多いご発表でした。

 後半の江渡さんのご講演では、ニコニコ学会βのようなユーザ参加型の共創的な場について、その特徴や背景から実際の事例の紹介まで、こちらも様々な点をご紹介いただきました。「イノベーションはある程度狙って起こせる」というお話とその検証の難しさが、とても印象的でした。

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発表者:堀川大樹さん(慶應義塾大学)

タイトル:極限環境動物クマムシとアストロバイオロジー

 クマムシは体長1mmにも満たない微小な生物だが、我々ヒトと同様に神経や筋肉をもつ動物である。だがこの生物は体内からほとんどの水分を失っても死ぬことなく生存できる。この乾燥した仮死状態は乾眠とよばれる。クマムシは乾眠状態で超低温や真空などの極限環境に耐える。乾眠状態のクマムシが低軌道宇宙環境において10日間の暴露に耐えた記録もある。このようなデータから、地球外にはシンプルな単細胞型の生命体だけではなく、クマムシのように複雑な体制をもつ高等な生命体も存在することが示唆される。今回は、極限環境動物クマムシを紹介しつつ、アストロバイオロジーの今後の展望について議論したい。

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発表者:江渡浩一郎さん(産業技術総合研究所/ニコニコ学会β)

タイトル:創造的な場のつくりかた ~ニコニコ学会βとつくば横の会の経験から~

 私は、2011年に、一般市民も研究に参画するユーザー参加型研究発表の場「ニコニコ学会β」を設立した。研究機関には属していないが研究に強い情熱を持つ「野生の研究者」に活動の場を提供した。新しい学会のデザインとしてグッドデザイン賞、アルス·エレクトロニカ賞を受賞した。2011年に活動期間を5年と定めて開始し、昨年末に最終回となるシンポジウムを実施した。今年の5月には、これまでの活動をまとめた『ニコニコ学会βのつくりかた』を出版した。

 次の展開として、つくば市に在住·勤務している人を横につなぐ活動「つくば横の会」を発足した。昨年の2015年6月に第1回、今年2016年6月に「第2回つくば横の会」を開催した。ツイッターのトレンドに数日間取り上げられたり、常陽新聞の1面記事にしてもらえたりと、たくさんの反響があった。

 さて、私はそのような「創造的な場を作る手法」そのものを研究対象としている。とはいえ、曖昧模糊とした存在であり、どう形にすればいいのか考えあぐねている点もある。そのような悩みも含めて議論させていただければ幸いである。

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